為末大

「自分たちのサッカーをする」。今回のW杯で、選手たちがことあるごとに口にしていた言葉だ。自分たちらしさ、それは一体何なのだろうか。 例えば無人島で生まれて育ち、誰とも会わなければ、自分の背が高いのか低いのかは分からない。強気なのか慎重なのか、そういった特徴もすべては誰かと比べることで初めて分かる。つまり自分らしさが分かるには、自分以外との比較が必要になる。 サッカーだけではなく、ビジネスや他のスポーツにおいても、私たちはよく日本人らしさという言葉や、自分たちらしさという言葉を使う。けれども本当の意味で自分らしさを知るためには、どんどんと自分とは違うものと出会っていかなければ分かっていかない。同じ村に居続けている間は、似た人との比較しかなく、自分らしさなんて分からない。その自分らしさは村の中での特徴でしかない。 見方を変えるとサッカーは自分たちらしさという言葉が使えるぐらい、海外と向き合っている選手が増えてきた表れでもあるように思う。おそらくこれから、本当の意味での日本人らしい戦いを作り上げていくのだろう。 自分たちはいったい何者なのか。日本とはいったい何なのか。グローバル化の中で「自分たちらしい」戦い方をしていくためにも、私たちはこれからどんどんと違う世界に飛び込んでいく必要があるように思う。